WEB ライナーノーツ

■ディッセンバーズ (DECEMBERS)
ロックデッドストック vol.1 (ROCK DEADSTOCK vol.1) DCBS-R001
※全7曲。2020年11月1日発売。
 


(WEB ライナーノーツ/大伴良則)

『ROCK DEADSTOCK vol.1』 Privatelyな曲目解説


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1. 25 or 6 to 4(長い夜) Chicago
feat. 石原慎一 (vocal), 藤井”ヤクハチ”康一 (sax)

管楽器を導入したロック・バンドとして、「ブラス・ロック」というニュー・ロックの新しい領域を開拓した巨星のひとつ Chicago(シカゴ)の1970年のヒット曲。ブラッド・スウェット&ティアーズ(BST)やチェイス、アイズ・オブ・マーチ等同域のバンドの中で、最もロック・テイスト豊かなバンドと評されたChicagoのエキサイティングな代表作だが、この名曲をドラマチックに歌い上げてくれたのが“石原慎一(Vo.)”。’80年から、歌手/俳優/声優/演出家/ラジオ・パーソナリティー等、凡そ「声」を必要とする場の全てで大活躍してきた60歳のベテランの朗々たる歌声と、おなじみのブラス・フレーズが、よりアダルトなニューヨーク的ロック・ミュージカルを産んだ思い。更にこのドラマを煽るのが、藤井“ヤクハチ”康一のブロウするサックス。彼の熱情のプレイが摩天楼の明け方直前のドラマを際立たせる。2020年のニューヨークか?
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2. Sunshine Of Your Love(サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ) Cream
feat. 小林圭吾 (guitar), Yazzy Tanaka (rap)

今やアダルト・コンテンポラリーなギタリスト&ボーカリストとして現役続行中のエリック・クラプトンを世に送り出した曲のひとつ。エリックをフィーチャーした3(スリー)ピース・バンド Cream、1967年のヒット曲である。
この著名中の著名ギタリストの名曲に、果敢に挑戦してくれたのが、スパニッシュ・ギターの若き精鋭、小林圭吾(The Notes Of Museum)。ジプシー・ジャズに使われる名機:マカフェリギターで、見事なプレイを演じてくれた。エレクトリック・ギターのヒーローを数多く生んだ時代の名曲をカヴァーするにあたって、敢えてそれを使わないというこのアルバムの狙いを、瞬時に具現化。そして、この曲が内包していたファンク感を浮き彫りにしてくれたもうひとりの主役が、関西在住の若きラップ・スターYazzy Tanakaのスピーディなラップ。新世代のカンフルだった。
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3. Purple Haze(紫のけむり) Jimi Hendrix
feat. あるまゐら (vocal), 東條あづさ (trombone)

米国シアトルから英国ロンドンに渡り、あっという間にニュー・ロック/アート・ロックの顔となったジミは、トリッキーなプレイも織り交ぜたギター・プレイで、スーパー・ギタリストとして観られることが多い。だが、ブルースを基にした優れた作曲家で、サイケデリック時代を具現化した作詞家としての才能も注目されてしかりだった。彼の名声を決定づけた1967年のこの曲は、その多才さを凝縮したような傑作で、ロックの黄金の定番となっている。しかし、この曲の骨組みにあるブラック・コンテンポラリーな要素が拡大されたここでのアレンジは改めて、この曲の魅力を再認識させるはず。モデル&シンガーのAlmira(あるまゐら)のvo.と、東條あづさのトロンボーンという若き女性ふたりのパフォーマンスが、ロックの代名詞とまで言われるこの曲を、まるで現在のオリジナル曲のように変身させてしまった。ジミに、そして、ふたりに拍手したい思いだ。
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4. Heartbreaker(ハートブレイカー) Grand Funk Railroad
feat. 書上奈朋子 (vocal,chorus,all ensemble)

まるでパリの古き裏通りに迷いこんだような気にさせるメランコリックなヴォーカルとコーラス、アンサンブルを担っているのは書上奈朋子ひとりだ。1990年代初めから、欧州各地で、ユニットのOPERA(後にジ・エキセントリック・オペラ)として活動し、その後、アンサブル・プラネタ等のプロデュース、ソロ活動と、独自のクラシカル・クロスオーヴァーな世界を開拓し続けている才女だ。オリジナルは、米国デトロイトから’69年にデビューしたGrand Funk Railroad。ライブ・パフォーマンスの凄さで、新しいハード&ヘヴィー・ロックのスターの道を駆け昇ったバンドだ。’71年来日時の、後楽園球場(現:東京ドーム)でのライヴでは、突然の雷雨に臆せず演奏を続け、それはいまだ語り草になっている。タイトル通りのこのハートブレイク・ロック曲を、アンビエント曲にリフォームしたのは書上の暴挙であり快挙である。
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5. Light My Fire(ハートに火をつけて) Doors
feat. 浅井竜介 (vocal)

「3」のジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョップリン同様、ドアーズのジム・モリソン(vo.)も若くして世を去ったのと、同時代の曲「ジ・エンド」が映画『地獄の黙示録』に使われた影響か、ドアーズはダークなロック・バンドと思われがちである。だが、ニューヨークとロンドンを中心にした1960年代後期のニュー・ロック創成期で、珍しくロスアンジェルスの趣(おもむき)を豊富に持つバンドでもあったのが今回のこのリフォームでもよく解る。’67年のドアーズ最初のヒット曲は、ホセ・フェリシアーノのラテン的カヴァーでもヒットしたが、そのラテン・テイストを再度掘り起こしたアレンジ。陶芸家として著名な浅井竜介が、もうひとつの顔・・・ソウルフルなヴォーカリストの才を披露してくれる。同じ60年度末に、サンフランシスコで芽生えていたWARやSANTANAの存在、そして、ラスカルズ等のブルー・アイド・ソウルに通じるアレンジと浅井のヴォーカルである。
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6. Stairway to Heaven(天国への階段) Led Zeppelin
feat. 西村知恵 (vocal)

ジミー・ペイジ(g)とロバート・プラント(vo.)のふたりのフロントマンを持つLed Zeppelinは、ハード・ロックの礎となる数多くの名曲を産んでいるが、中でも、名曲中の名曲がドラマチックなこの曲だ。ハード&ヘヴィーの域だけでなくプログレッシヴの域にも踏みこんだと評されている。このカヴァーには、ジャズのライヴ・シーンで逸材と呼ばれている西村知恵の2020年のアルバム『SEVENTH SENSE』制作中に生まれ、同作品のボーナス・トラックとして収録されていた。制作陣のひとりとして身内を絶賛するのは気恥ずかしいが、ただジャズ的で留まらない青木庸和のアレンジと、西村の迫力あるスキャットvo.の技量には驚かされた。そして、このトラックが、今回のアルバム『ROCK DEADSTOCK vol.1』の制作動機になったのである。名曲の骨格やメッセージは姿を変えても損なわれる事はない、ただし名曲への敬意は不可欠、と教えられた。
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7. Summertime Blues(サマータイムブルース) Eddie Cochran / The Who
feat. K.INOJO (voice,talk), 反町”YUKI”哲之 (bass)

ロックンロール創成期のスターのひとり、エディ・コクラン(Eddie Cochran)のオリジナル版はもちろんだが、1970年の伝説であるウッドストック・フェスでのThe Whoの熱演版が、数多いカヴァーの中でも抜きん出たもの、と記憶する人は多いだろう。今回のカヴァー・アルバムにあたって、DecembersのK.INOJOは、先ずこの名曲を選び、自ら新しい歌詞を書き、新しいパフォーマンスのアイデアを練った。荒々しいコクランや The Who のノリとは異なる都会的なAOR調のアレンジに乗って、K.INOJOのエレクトロvoiceとトークが、2020年のコロナウィルス禍の下の都会の心理を綴っていく。ダフト・パンクのエレクトロとウッドストック時代への追憶も感じさせる新しいブルースである。中間部での爆発轟音は、The Who への敬意をこめた音。REACTION等で活躍する反町“YUKI”哲之が、ベースだけで作り上げたオマージュ音である。
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▼ディッセンバーズ「ロックデッドストック vol.1」アルバム全曲紹介

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▼DECEMBERS ROCK DEADSTOCK vol.1 (original) playlist
https://www.youtube.com/playlist?list=PLnxdg_tdpJ7K1_aDwBXCcZnzhQMqoxY1c
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